三代 加藤春鼎の作陶ポリシー

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創作への姿勢

一番大切な事、

陶芸家にとって最も大切な事は、見識眼、美意識であると考えます。良いものを見分ける目、その感覚というのでしょうか。 物を作る過程には、ベストな瞬間というものが必ずあります。まだ足りないかなと思って手をかけることで、ピークを過ぎて悪くなってしまうことがあります。 それを回避するには、物の魅力を一番良いところでおさえられる見識眼、美意識を養うことだと思います。
技術ももちろん必要ですが、自分の技術を把握していれば、その中で良いものが作れます。 例えば、轆轤(ろくろ)が上手い名人に対し、稚拙な轆轤でも自分の魅力を引き出すことを追及していけば、名人をも凌駕することができると思うのです。
そのためにも、普段の生活の中で見識眼・美意識を高める訓練をするなど、意識的に心がけることが重要であると感じています。そして、最後は自分を信じることしかないと思います。

引出黒

引出黒陶作風景「引出黒」にはずっと魅力を感じていましたが、二代春鼎の代名詞的になっていたのでどこか遠慮があり、本格的に始めたのは襲名してからです。
真っ赤になった器を窯から引っ張り出して水につけるという独特の技法は、とにかく迫力があります。 水につけることで一気に表情が変わり、すぐに結果が見えるのも面白みの一つです。通常の焼き物では出せない黒の深みもそうですし、質感も魅力的です。 また、急冷することで生地が柔らかくなり、手に取った感じ、口に当たった感じがすごくソフトでその感覚が大変好きです。
襲名以来10年間、精力的に続けてきても未だその魅力は色褪せず、まだまだ先があると実感しています。 三代春鼎にとっても名実ともに代名詞となるよう、引出黒は生涯の仕事としていきたいと思っています。

食と器のコラボレート

器は料理が盛られて初めて完成する。花が入って一つの形になる。私のなかで器を食器・花器として捕らえる意識がますます強まっています。
創作は、単なる作品づくりではなく、その完成までを感じることができるような活動も行っています。
そういった場の一つとして、ギャラリー「アトリエ春」には、大きなキッチンカウンターも設置しましたので、イベントなどで皆様と共に食や花を楽しんでいきたいと思っています。

自分らしい物作りのへ道

若い頃は器性を持たないオブジェのようなものを作っていました。それが今の作品の元になっている部分があると思います。そのような活動を通して新しい物の良さを知ると同時に、伝統の重要性も理解したつもりです。
受け継いだものを自分の中で消化して新しいものを作り、それを過去と繋げていく。進化なのか退化なのか分かりませんが、それが一つの伝統の形だと思っています。
時代を感じながら、伝統を継承しつつも伝統に捕らわれず、体験した全てが礎となる。そこから自分らしさが生まれると思っています。